「hacks」は困り事を解決することなので別段マネタイズもHack上等

という認識が確実にあるのは多分間違いなくオライリーのせい。いや別にその認識でいいと思うけど。

ネットで完結しているビジネスだけでマネタイズを成立させようとしたら、そりゃ行き詰るのも当然だよな。だってネットでCGMに時間を潰すような奴らは基本的に貧乏なんだから。月間平均3冊程度の本をamazonで買うのすらふうふう言っているような奴らに「1,000円以上お金を使ってくれたら」とか夢みたいなこと言ってたら広告外での収入でサービスが黒字化するなんてことありえませんって。

http://kirik.tea-nifty.com/diary/2009/06/hacks-52e9.html

身もフタもなくその通りで、「日本人全員から1円もらったら大金持ちじゃね?」の類のビジョンとか戦略とか言うにはためらわれる妄言と本質的に何か違いがあるのか、それが問題だ。

例えばそういう「基本的に貧乏な奴ら」からもなけなしの金をむしりとることに成功してる一例がケータイ屋であり、ちょっと前のワーキングプア報道の時にも「ネットカフェ泊まり。でもケータイは手放せない」的な記事があちこちで散見された。電気代も水道代も払わないが(まあネカフェの家賃に含まれているんだけど)ケータイ代だけは払う。個人で明示的に維持しなければならない唯一のインフラは電気でも水道でもなく通信回線であり、代替できないから払わざるを得ない。突き詰めればマネタイズはこの「代替性をいかにゼロに近づけられるか」という点にかかっている。

この「代替できない価値」を(広告主向けに)構築しているのがYahooであり、また2chやニコ動も同様に代替不可能なユーザ体験を提供している。タチの悪いことに代替不可能なのはサービスではなくユーザ体験総体であり、Yahooの真似をしようと思ってもシステムは作れても同様のボリュームやユーザ層を構築できなければやはり代替不可能だし、1ch.tvが生まれながらにしてゾンビだったのも同じ。

そして、現在それを誰にも分かりやすく定量化する手法は存在しておらず、故に「勝つべくして勝ったサービス」よりも「なぜかいつのまにか一番人気になったサービス」が圧倒的に多く、そしてそれを見て後追いで作られるマーケティング制作のパワーポイントは軒並みクズ以下の内容であり、結局明日生まれるヒットサービスはやはりサービスデザインのセンスに依存した極めて不安定なシロモノのままだったりする。

裏を返せば、定量化できないことには目をつぶって無いものと考えるこういう状況では、サービスデザインやコミュニティデザイン等について自分なりの方法論あるいは理論化はされていなくてもセンスを持っている人間が非常に価値を持つということであり、ひろゆきがなんやかやと俎上に(訴状にも)上るのもそういうことなんだろうなあ。